子宮・膣の支持機構
ロルフコンセプトウィメンズの星です。
産後の女性や年齢を重ねた女性で多くみられる症状に「臓器下垂」があります。
中でも子宮が下垂し、膣から出てしまう「子宮脱」は、不快感が強く、女性の生活の質(QOL)に大きく影響を与えます。
子宮を含めた骨盤内臓器は、腹腔内の最下部に位置します。そのため骨盤内臓器の支持機構が機能しないと下垂してしまいます。さらに膣は前方に尿道(結合組織も含め)、後方に直腸に挟まれた不安定な構造をしており、膣の支持が不良であれば子宮脱が起こることもあります。
今回は子宮の支持機構についてお話させていただきます。
臓器下垂のある女性に対してアプローチしている方は、改めてアプローチ方法について考えるきっかけになれば良いなと思います。
子宮や膣はこのような支持機構があります。
- 位置による支持
- 膜・筋膜による支持
- 靭帯による支持
- 筋群による支持
一つずつ説明していきますね!
目次
位置による支持
子宮を側方から見ると前方に傾斜しています。子宮の前下方にあるものは膀胱です。つまり子宮は前下方にある膀胱に寄りかかって位置しています。これは膀胱が空の時に顕著です。
そして膣は背面に位置している直腸によって支えられています。
子宮・膣は前方は膀胱、後方は直腸によって挟まれており、膀胱と直腸によって支持性を得ています。
膜・筋膜による支持
骨盤内臓筋膜
身体のあらゆる臓器系は結合組織で構成された膜で覆われています。これを内臓筋膜と呼びます。内臓筋膜は身体の臓器の支持に関与しています。頭蓋底から骨盤底まで繋がりをもって臓器は膜で覆われています。その中で骨盤内臓器レベルにいくと「骨盤内臓筋膜」と呼ばれます。
子宮を覆っている筋膜は後方では直腸に、前方では膀胱に接続しています。これにより子宮は支持を得ています。
さらに子宮を覆う膜は側方で広がり骨盤内側の壁面に付着しています。この膜を「広間膜」と呼ぶのですが、この広間膜が子宮と膣の支持に大きく関与しています。
また広間膜は上部(子宮周囲)ではかなりの可動性があります。妊娠で子宮が大きくなるのに適応していると考えられます。
広間膜の下部(子宮頚)では組織が肥厚しており、骨盤内側の壁面にしっかりと固定してあり、非常に可動性が少なくなっています。
直腸膣中隔と膀胱膣中隔
膣と直腸の間は筋膜によって満たされています。この部位を「直腸膣中隔」と呼びます。また膣と膀胱の間も同様に筋膜によって満たされています。この部位を「膀胱膣中隔」と呼びます。
直腸膣中隔と膀胱膣中隔は膣の支持性に大きく関与しています。
会陰膜
骨盤底表層の筋群の浅会陰横筋と深会陰横筋の間にある筋膜に「会陰膜」というものがあります。膣は会陰膜の直上に位置し、直接的な繋がりがあります。そのため膣や子宮の支持にも大きく関与しています。
靭帯による支持
子宮・膣の支持に関わる靭帯も存在します。靭帯は結合組織の中でもコラーゲン繊維を多く含み、規則性の強い組織です。そのため支持や安定性に大きく関与します。以下の靭帯は子宮や膣の支持に大きく関与しています。
・子宮円索
子宮体部の支持に関与しています。子宮を包む膜が肥厚した靭帯であり、恥骨に付着します。子宮の後屈を防ぐ役割があります。
・仙骨子宮靭帯
子宮頸部の支持に関与しています。子宮頸部の後方から仙骨に付着しています。
・膀胱子宮靭帯
子宮頸部の支持に関与しています。子宮頸部の前方から膀胱及び恥骨に付着します。
・基靭帯(子宮頚横靭帯)
子宮頸部の支持に関与しています。子宮頸部の両側方から両骨盤に付着します。
・骨盤筋膜腱弓(ATFP)
骨盤の閉鎖孔を覆う内閉鎖筋の筋膜が肥厚した組織であり、膣や直腸を覆う筋膜と側方で連結があります。そのため、膣や直腸の支持に関与しています。また尿道もこの骨盤筋膜腱弓によって構成されているハンモック構造によって支持を受けています。
骨盤筋膜腱弓は内閉鎖筋の筋膜が肥厚した組織であり、上方では腸骨筋の筋膜との連結があります。そのため臨床上では非常に重要になってくる組織と考えられます。
筋群による支持
いわゆる骨盤底筋群が筋群による支持を指しますが、この筋群による支持が最も強い支持であると言われています。特に肛門挙筋は子宮や膣の支持に大きく関与しており、子宮脱の原因の多くは肛門挙筋の機能低下だと言われています。
肛門挙筋より浅層にある深会陰横筋も膣に直接接合しており、膣の支持に関与しています。
いかがでしたか?
子宮脱や膣下垂に対するアプローチは、一般的に骨盤底筋のエクササイズを行うことが多いと思います。もちろん筋群での支持が最も強力であるとされていますので、間違いではないです。
しかし子宮や膣の支持機構はもっと複雑であり、膜・筋膜や靭帯の支持も大きく関与しています。
では膜・筋膜や靭帯に対してどのようにアプローチすれば良いのか?
ヒントになりそうなことは、この子宮や膣の支持機構を知った上で、骨盤帯や全身を統合的に見ていくことなのではないかと思います。
内臓筋膜は頭蓋底から骨盤底まで繋がっていますからね!!
子宮脱や膣下垂など骨盤底のトラブルに困っているクライアントに何かの役に立てればと思っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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